第2章 計量法における単位の規制

 計量法では、計量単位として国際単位系(略称SI単位)をもとに法定計量単位を定め、取引又は証明における非法定計量単位の使用の禁止、及び非法定計量単位の付した計量器の販売の禁止を定めている。これが、計量法における単位の規制の概要である。本章では計量法における単位の規制について説明する。

1.法定計量単位

 計量法では、物象の状態の量として熟度の高い72量を規定しており(第1章参照)、それに対応する計量単位を法定計量単位として規定している。現時点(平成11年)において、この法定計量単位は以下の5つに分類される。 (1)SI単位に係る計量単位(表2.1) (2)SI単位のない量の非SI単位(表2.2) (3)SI単位の る量の非SI単位(表2.3) (4)用途を限定する非SI単位(表2.4) (5)猶予期限を定めた非SI単位(表2.5) これらの内、(1)〜(3)については、10の整数乗を表す接頭語(表2.6)と組合せて使用することができる(一部例外を除く。詳細は1.6参照。)。

1.1 SI単位に係る計量単位(表2.1)

 計量法では、取引又は証明に使用する計量単位について、原則として国際単位系(SI単位)によることとしている。法の中では第3条でSI単位に係る計量単位を定めている。この中で定めているものは、72の物象の状態の量全てではなく、SI単位の る65量についての計量単位である。 厳密に言うと、これらの単位のうち時間の“分(min)”、“時(h)”、質量の“トン(t)”などはSI単位ではないが、計量法ではこれらもSI単位に係る計量単位として定めている。

1.2 Sl単位のない量の非SI単位(表2.2)

 上述したように、SI単位では72の物象の状態の量のうち、65量についてしか定めがないため、SI単位のない7量に対して非SI単位で法定計量単位を定めている(法第4条第1項)。

1.3 SI単位のある量の非SI単位(表2.3)

 計量法では、SI単位を基本として計量単位を定めているが、SI単位がある物象の状態の量についても、国内外で非SI単位が広く用いられてる5つの物象の状態の量については、その使用を禁止することによって経済活動、国民生活に混乱を与えるおそれがあるため、非SI単位であっても、法定計量単位として定めている(法第4条第2項)。

1.4 用途を限定する非SI単位(表2.4)

 1. 1〜1. 3以外に、海面における長さの計量など特殊の計量に用いる「長さ、質量、角度、面積、体積、速さ、加速度、圧力、熱量」の計量単位についても、特定の使用分野に限って、法定計量単位として定めている(法第5条第2項)。 これは、特定の分野において、表2.4の計量単位が国内外において広く用いられているため、非SI単位ではあるが、用途を限定して法定計量単位として認めているものである。したがって、定められた用途以外では非法定計量単位となる。例えば、真珠の質量を計るための「もんめ」単位の質量計は、一般の質量計として販売することはできない。

1.5 猶予期限を定めた非SI単位(表2.5)

 1. 1〜1.4の計量単位は、平成5年の計量法改正時に定められたものであるが、改正前の計量法では上記計量単位以外にも非SI単位を法定計量単位として認めていた。これらの計量単位について、急激にSI単位に移行することは混乱を招くことが予想されるため、以下の考え方で猶予期間を定めた。

 @3年の猶予期間の単位(猶予期限は1995年9月30日) 
    我が国において、わずがしか使用されていない比較的容易に変更できる計量単位。
 
 A5年の猶予期間の単位(猶予期限は1997年9月30日)  
    法律改正内容の周知徹底や事務的な準備に要する期間が必要な計量単位。

 B7年の猶予期間の単位(猶予期限は1999年9月30日)
    保安上又は安全上の理由から、急速な単位の移行が困難であると認められる計量単位。

 これらの単位は猶予期間中は、法定計量単位として認められているが、猶予期限を過ぎると法定計量単位ではなくなる。一般にこれらの単位を削除対象単位と呼んでいる。これらの単位及びその猶予期限は計量法附則第3条に規定されている。 @、Aの単位については、現時点において既に法定計量単位から削除されている。Bの単位についても、平成11年10月1日かちは法定計量単位から削除される。 本冊子において、このBの単位をSI単位にどう変更していくかがメインテーマであるがこれについては第3章において述べる。
 

1.6接頭語の使い方

 計量法では表2.1〜表2.3 の単位について表2.6の接頭語と組み合わせて、使用することを認めている。 しかしながら、次の単位について接頭語を付すことは認められていない。
 @接頭語が重複するもの
  単独及び組立単位中のキログラムに接頭語を付すことは認められていない。
 

質量(キログラム)、密度(キログラム毎立方メートル)、質量流量(キログラム毎秒、キログラム毎分、キログラム毎時)

 A慣習上接頭語を付さないもの
 10進法でないもの、比を表す単位等に接頭語を付すことは認められていない。
 
時間(分、時)、角度(度、秒、分)、電磁波の減衰量(デシベル)、音圧レベル (デシベル)、振動加速度レベル(デシベル)、回転速度(回毎分、回毎時)、圧力(気圧)、濃度(質量百分率、質量予分率、質量百万分率、質量十億分率、体積百分率、体積千分率、体積百万分率、体積十億分率、ピーエツチ)


 

1.7 単位記号について

 計量法では、上述の単位の記号について標準となるべきものを、通商産業省令(計量単位令)で定めている(法第7条)。標準となるべき単位記号については、表2.1〜表2.7のとおりである。
 単位記号は、計量法の中で標準となるべきものを示しており、例えば、筆記体で記号を表現すること等を制限するわけではなく、定められた記号以外のものの使用に罰則が伴う規制ではない。
 しかしながら、大文字と小文字の区別については大文字と小文字とで違う意味を持つもの(例えば、m(ミリ)、M(メガ))が存在するので、正しく区別して使用すべきである。
 

1.8 72量以外の物象の状態の量について

 上述してきたように、計量法では72の物象の状態の量について、法定計量単位として定めている。 しかしながら、ア2量以外にも物象の状態の量は存在する。こういったもののうち、17の量については政令により単位等を定めているが、これらの単位については2.以降で後述する様な規制の対象にはならない。 しかしながら、72量以外の物象の状態に使用する単位も、SI単位による組立単位あるいはJIS等の規格に定められている単位を使用することが適当である。

2.取引又は証明における規制

 計量法では第8条第1項において
法定計量単位以外の計量単位(非法定計量単位)は、第2条第1項第1号に掲げる物象の状態の量について、取引又は証明に用いてはならない。
 と、定めており、72の物象の状態の量(第1章参照)について、取引又は証明において非法定計量単位の使用を禁止している。 計量法での取引及び証明の定義は法第2条第2項で下のように定めている。
この法律において「取引」とは、有償であると無償であるとを問わず、物又は役務の給付を目的とする業務上の行為をいい、「証明」とは、公に又は業務上他人に一定の事実が真実である旨を表明することをいう。

2.1 取引における計量

 平成6年7月に「計量法、計量法施行令、計量法施行規則の解釈及び運用について(機局290号)」の通達の中で、取引における計量について以下のような解釈が示されている。 取引における計量とは、契約の両当事者が、その面前で、ある計量器を用いて一定の物象の状態の量の計量を行い、その計量の結果が契約の要件となる計量をいう。工程管理における計量等、内部的な行為にとどまり、計量の結果が外郎に表明されない計量や契約の要件にならない計量は含まれない。 計量した物に計量の結果を表示する場合については、その物が取引の対象となり、表示した結果が契約の要件となるときは、その表示をするための計量は、取引における計量に該当する。内部の工程管理における計量結果の表明であり、工程管理上その計量結果の表示を用いる場合は、その表示のための計量は取引における計量に該当しない。

2.2証明における計量

 平成6年7月に「計量法、計量法施行令、計量法施行規則の解釈及び運用について(機局290号)」の通達の中で、証明における計量について以下のような解釈が示されている。 法第2条第2項の「公に」、「業務上」、「一定の事実」、「真実である旨を表明すること」の解釈は次のとおり。
「公に」とは、公機関が、又は公機関に対し、であること。「業務上」とは、継続的、反復的であること。「一定の事実」とは、一定のものが一定の物象の状態の量を有するという事実。特定の数値までを必ず含むことを有するを要するものでなく、ある一定の水準に達したか、達していないかという事実も含まれる。「真実である旨を表明すること」とは、真実であることについて一定の法的責任等を伴つて表明すること。参考値を示すなど、単なる事実の表明は該当しない。

2.3文書類について

 生産活動や営業活動を行う上で、図面、仕様書、取扱説明書、カタログ等様々な文書類が使用されている。これらの文書類を取引又は証明にあたるもの、あたらないものを整理すると、以下のような整理になる。
 
取引または証明にあたるもの 取引または証明にあたらないもの
 契約書
 仕様書
 性能証明書
 官公庁への提出書類
 カタロク類
 取扱説明書
 契約書に添付する参考資料
 広告類

取引又は証明にあたらないものはSI化しなくていいということではなく、随時SI化ていくことが望ましいことは言うまでもない。

3.1 計量器に関する規制

計量法第9条第1項において
 
第2条第1項第1号に掲げる物象の状態の量の計量に使用する計量器であって非法定計量単位による目盛又は表記を付したものは、販売し、又は販売の目的で陳列してはならない。第5条第2項の政令で定める計量単位による目盛又は表記を付した計量器であって、専ら同項の政令で定める特殊の計量に使用するものとして通商産業省令で定めるもの以外のものについても、同様とする。

 と、計量器に関する単位の規制が定められている。 これは72の物象の状態の量を計量する計量器については、非法定計量単位による目盛又は表記を付したものの、販売及び販売のための陳列を禁止されていることを意味している。 非法定計量単位による目盛又は表記が付されているものは、法定計量単位が併記されているものも含めて販売することができない