第3章 7年の猶予期間の単位と移行の進め方

 保安上又は安全上の理由から、急速なSI化が困難な単位について、計量法改正時に7年の猶予期間が設けられた(猶予期限は、1999年9月30日)。これらの単位は、産業界で多く用いられている重力単位系(工学単位系)の9つの単位が該当し、計画的な移行が望まれる。 7年の猶予期間の物象の状態の量は、力、力のモーメント、圧力、応力、仕事、工率、熱量、熱伝導率、比熱容量であり、それぞれの単位は、順にN、N・m、Pa、Pa又はN/m2、Jw、J、W/(m・℃)、J/(kg・℃)である。
 ここでは、いくつかの産業分野でSI化を実施しているので、その実施例から新計量法に沿った7年の猶予期間の単位の移行の進め方の参考となる事項について述べる。

1.力について

1.1 力の単位[kgf→N(二ユートン)]

 SI単位では力の単位はニュートン(N)で表す。力は質量と加速度の積であるという、物理学における運動の第二法則の力の定義より、質量mの物体に働く力Fは、その物体に働く加速度をaとしたとき  F=maで表される。ここで、質量、加速度のSI単位はそれぞれ、kg、m/s2であるので、力の単位をSI基本単位で表すとkg・m/s2となる。 SI単位ではこの力の単位を功績ある物理学者の名前をとって、ニュートン(N)と定めている。 参考 ニュートンなる名称は、英国の物理学者、数学者で万有引力発見者のSir Isaac Newton(1642〜1727)の功績をたたえて、SI組立単位の一つとして命名された。
 従来は力の単位として、質量と同じ単位の“kg”が使用されていた。日本では、20年ぐらい前から力の単位に質量と同じ単位の“kg”を使用することに問題があるとして、工学単位系でぱkgf”を使用して表すことが多くなった。この表示は、質量と同じ単位の“kg”と区別するためであり、SI化ではなかった。

SI化では”kgf”単位を“N”に切り換えていくことになる。従来単位(kgf)と、SI単位(N)との関係は、従来単位は地球上で働く重力加速度を基準に定めているので、標準重力加速度(9.80665 m/s2)を用いて

 1 kgf=1 kg ×9.80665 m/s2=9.80665 N

となる。

1.2 SI化で注意すべき事項

 力に関する用語に重量がある。“重量”という用語にぱ質量”という意味ど力”という意味とがある。この場合、意味に対応した正しい単位を使用する必要があるが、質量との意味で重量を使用している場合は、できるだけ質量という用語を使用すべきである。 参考 計量法は用語までを明確に規定していないがSI化を機会に、なるべく正しく用語を使用するようにするべきである。
 

2.力のモーメントについて

2.1力のモーメントの単位[kgf・m →N・m(二ユートンメ−トル)]

 力のモーメントやトルクの従来単位はkgf・mである。 SIでは、これをN・mで表す。もちろん接頭語を用いてN・cmやkN・mも使用できる。接頭語を付す場合には、計量法による規制はないが、接頭語を一つだけ使用べきである。すなわち、kN・cmのような表記を行わない。
  接頭語については、JIS Z 8203で、接頭語の使用が標準化されているので、一般的にはこれに従うのがよい。
 単位記号と単位記号との間に中点を使用するかどうかについては、N・mのように簡単な場合には問題はないが、mNやmNmは誤読のおそれがあることから、中点を使用してN・mやmN・mと表記したほうがよい。一般的には、中点を使用することに統一したほうがよい。
 従来単位とSI単位との関係は、標準重力加速度(9.80665 m/s2)を用いて、1 kgf・m=9.80665 N・mとなる。 実際には、ボルトやナットの締付けトルクの場合だと、±10%程度のバラツキが生じるが、1 kgf・m ≒10 N・m としても2%の換算誤差しか生じない。

2.2 トルク計

 モーメントやトルクは、回転方向に加える力に支点から力点までの腕の長さを乗じたものであるから、機械要素部品の締付けトルクなどは、トルク計を使用して計量する。このトルク計は、機械式のものとして、腕のたわみ量からトルクを測定するもの(図3.1)と、あらかじめトルク値を設定して、その設定トルクに達したときに滑りを起こす構造のもの (図3.2)の2種類が市販されている。
 トルク計は、製造メーカーにおいて目盛板を張り替えたり、トルク設定値を変更して校正するなどしてSI目盛計器に再製できるので、計器のSI化は比較的に容易である。
 トルク値をデジタル表示するものは、回路基盤を取り替えるなどして、SI目盛に切替することができる。
 自動車の組立ラインや修理工場では、機械式トルク計が多く使用される。自動車工業は、モデルチェンジが3〜4年サイクルで行われ、組立ラインを更新時に、これまで使用した非SI単位のトルク計を全数引き上げ、製造メーカーでSI目盛のトルク計に改修・校正して、次の組立ラインで使用することができる。修理工場のトルク計は、数を必要としないのでSI化は容易であるといえる。
 重力単位系からSIへの変更は、今後急速に進展するが、製造メーカーは短期間の対応が困難と思われるので、なるべく早い時期からのSI移行準備が望まれる。 自動車修理工場や町のガソリンスタンドのピットでは、トルク値が非SI単位のものとSI単位のものとが無差別に入ってくるため、新たにSI単位のトルク計を追加購入すればよいが、メカニックが非SI単位とSI単位との数値の違いをその都度使い分けをしなければならないという煩わしさがある。幸いにして、メカニックの多くは、自動車整備士の資格を所持しており、あまり問題視はされていない。しかし、SI化のための基礎教育は必要である。日本自動車整備振興会連合会がその任に当たっている
 

2.3 トルクチエツ力

 たわみ式トルク計は、使用頻度により、腕に永久ひずみが生じることがあるので、トルク計自体のチェックを行うトルクチェツカが必要となる。 トルクチェッカの例を図3.3に示す。
 

 図3.3のトルクチェツカは、非SI単位とSI単位のトルクをスイッチで切り替えができる方式のものである。 SI化の過渡期には、このような新旧切り替え式のものも使用されている。 kgf・mの猶予期限は、1999年9月30日である。そのため、このような新旧切り替え式のトルクチェツカは基本的に販売がされなくなる(販売されるものは猶予期限前に製造されたもののみ)。 トルク計をSI化する際に、締付け精度をある範囲内に維持するために、トルクチェッカを常備することも大切なことである。

2.4 SI化で注意すべき事項

 設計において、モーメントの計算は重要である。重力単位系からSI単位に変更した場合、重力の加速度分だけ、すなわちSI化によって数値が約10倍となるため、注意が必要となる。 また、ねじの締付けトルクも数値が約10倍になるため、理解が曖昧だと締付けトルク不足になることが懸念される。
 

3.圧力について

3.1圧力の単位[kgf/cm2→Pa(パスカル)、N/m2(ニュートン毎平方メートル)]

 圧力の定義は、単位面積にがたる力の大きさである。圧力のSI単位は、Pa又はN/m2であるが、SI単位と暫定的に維持される単位として″bar″が定められており、計量法においても法定計量単位として規定されている。また、計量法では、圧力の単位として″atm″も法定計量単位として規定されている。
 従来単位で使用された圧力の単位の水銀柱ミリメートル(mHg)、水柱ミリメートル(mH20)及び重量キログラム毎平方センチメートル(kgf/cm2)は、PaやN/m2あるいはbarに変更しなければならない。国内のSI化の状況を見ると、圧力の単位にはPaを使用する例が多くみられる。 IS0の規格がbarを使用している場合には、barを使用している。 また、気象通報は、航空気象の気圧の単位にhPaを使用することを決め、TVの天気予報などではすでにこの単位を使用している。
 これは、世界気象会議で1984年から、気圧の単位にmbarからhPaに移行することを採択し、我が国では1992年12月から計量法改正に先立って使用された。この場合、幸いにして単位がmbarからhPaに変わっただけで、数値そのものは変わらなかったので、混乱は生じなかった。 hPaはすでに市民権を得ているようである。

3.2圧力計

 ブルドン管式圧力計(図3.4)は、その構造上から、大気圧でブルドン管の伸縮がない状態であるから、この状態(大気圧)を基準にしての圧力が測定できる。大気圧は真空状態を0 Paとした絶対圧では98 kPa程度である。
 そのため、工業会ではkgf/cm2は大気圧基準で、Paを絶対圧で用いることが多かつたが、猶予期間後は、Paに統一されるので、注意が必要である。 例えば、圧力計において、真空基準か大気圧基準か判断ができないことが往々にしてあり、IS0では、相対圧表示に“Pe”や“Gauge”を表示することを推奨している(図3.5)。
 その他に、JISでは絶対圧力計、微圧計、差圧計、精密圧力計、接点圧力計などを規定している。
 流体機械では、性能表示、仕様などに、圧力に水柱高さで表示する習慣がある。すなわち、圧力ヘツドである。この水柱メートル(mH20)というのは、999.972 kg/m3の密度を有する1mの高さの液柱が重力の加速度9.80665 m/s2のもとにおいて、その液柱の底面に及ぼす圧力である。
 このディメンジョンは、kg/m3×m×m/s2=(kgm×m/s2)/m2=N/m2となる。すなわち、高さh[m]の関数として圧力を表示できる。 ポンプの揚程、管の摩擦損失などでは、次の例のように圧力ヘッドを使用してきた。
 例:15 mの高さの所にあるの貯水槽に水を汲み上げるとき、人出管の直径を同一とし、管の摩擦損失を3mとしたとき、ポンプの全揚程Hは、H=15十3=t8 mである。
 圧力ヘッド[m]は、長さのSI単位であり、今後も使用できる。しかし用語として、圧力ヘッドを単に“圧力XX m” というべきではなく、“圧力ヘッドXX m” 又は水頭“XX m”と表示する。
 SI化によって、ポンプの吸い込み側と吐き出し側との圧力を“kPa”で測定することになるが、これらを“圧力ヘッドXX m” 又ぱ水頭XX m” で表示することもできる。
 なお、最終段階の削除対象単位の内、血圧測定のmHgは、引き続き使用することができる(第2章参照)。
 

 

3.3 圧力の換算関係

 多くの圧力に関する単位をSIに統一するためには、換算関係が必要になる。各種従来単位の換算関係を表3.1に示す。

3.4 SI化の事例

 圧力計は、機械、自動車、鉄鋼、造船、化学工業などで重力単位系に基づく計量単位が多く使用されてきた。装置に関連した圧力計のうち、取引や証明に該当する部分は主に高圧ガスの見なし証明や圧力容器の圧力証明に該当する部分がある。
 鉄道車両の運転室に設置されている圧力計は、運転保安に関わるものであり、運輸省令により設置が義務付けられ、列車走行中は運転士が常時監視して運転操作しなければならない。その圧力計は、従来単位“kgf/cm2 ” が長い歴史の中で業界に定着していたが、 “一挙に従来単位からSIを導入することとし、SI単一目盛の圧力計に切り替えられた。
 従来の鉄道車両用圧力計の一目盛間隔は0.2 kgf/cm2であり、実祭に車両で使用する圧力はその1/2の0.1 kgf/cm2単位で整備している。したがって、0.1 kgf/cm2をPa単位で換算すると、0.1 kgf/cm2 ≒9.8 kPa =0.0098 MPaとなり、MPaでは少数点以下の桁数が多く覚えにくいことから、大部分がkPaを採用することにした。
 JRグループ及び相互乗り入れを行っている私鉄は”kPa”を採用しており、相互乗り入れを行つていない私鉄では”Pa”を採用しているところもある。
 この鉄道車両の運転保安上で重要なブレーキ圧を示す圧力計は、多くの人命に関わるものとして、SI化に慎重論があった。しかし、1993年にJIS E 4118 (鉄道車両用ブルドン管圧力計)が改正され、非SI単位(kg/cm2)からSI単位(kPa又はMPa)に移行することとし新旧単位の二重目盛は表示しないことにしているのが特徴である。これらから、新車両はもとより、現行車両も順次SI化されている。
 化学工業で用いられる圧力関係の計器で、新たにSI化する場合と計器の改造とが考えられる。対象設備を事前に充分調査し、SI化への対応計画を立てて推進する。
 猶予期間が終了すると、新たに製造する圧力計はすべてSI単位目盛の圧力計になる。現在のSI化が進んだ工場でも、装置の中の圧力計にSI単位表示と非SI単位表示の圧力計とが混在する状態が発生する。こうした混在状態は、計器の読み違えや判断ミスを起こすことが考えらえるが、実施工場では生産活動がスムーズに行われていることが多い。
 このためには、すでに猶予期間が1年余りとなっているので、SI化に対して十分なる計画をもつことが何よりも必要である。

3.5 SI化で注意すべき事項

ヨーロッパでは、圧力の単位に“bar”を使用する例がある。これはkg/cm2と2%程度の差しかないので、数値を変えずに単位だけを変える利点がある。しかし、日本では圧力の単位に“Pa”を使用するように決めている産業団体が多い。計量法では、“bar”も使用できるようになっている。 実務上では、規格や図面に“Pa”を使用した場合に、絶対圧なのか、ゲージ圧なのかが判断できないことがある。ゲージ圧である場合には、その旨(Pe又はGauge)を明示すべきである。 98 kPaの違いは、無視できない。
 JISでは、圧力計に絶対圧のときにだげabs”を表示することにしている(図3.6)。
 
  

4.応力について

4.1応力の単位[kgf/m2→Pa(パスカル)、N/m2(二ユートン毎平方ミ1ノメートル)]

 応力は、圧力の定義と同じである。この応力は、直接に測定できないので、この算出には試験片の横断面を長さ測定器で測定して求め、引張試験機で試験片に付加した力を読み取り、この力“H”を断面“m2”で除して求める。 一般構造用鋼材のSS 41は、JISのSI化によってSS 400となった。これは、引張強さが400〜510 N/m2以上であるようにJISで規定している材料記号である。
 41 kgf/m2を換算すると、402 N/m2 (又はMPa)であるが、規格値はその下限が400 N/m2としている。
 なお、鉄鋼製品のJISでは、応力の単位に“N/m2”を使用しているが、これはIS0/TC 17(鉄鋼)が規格に使用していることに起因している。機械学会では応力の単位に“MPa”や“GPa”を使用していることから、機械工業の分野ではMPaやGPaを多く使用する傾向にある。
 また、鉄鋼JISは、予告方式2’を採用し、予告日以降はSIによる規格値を採用し、鋼材検査証明書などにも適用された。この方式は、日本の産業界に大きな影響を与え、SI化の起爆剤となった。
 土木分野では、コンクリート関係が“N/m2”を、土質関係が“N/m2”を、そして岩盤関係が“MPa”を使用する傾向にある。業界としては、統一したいという意見と、自然淘汰を待つのがよい、という意見が支配的である。
 応力の換算関係を表3.2に示す。

 

4.2 SI化で注意すべき事項

 土木建築分野では、引張強さや応力の単位にPa又はN/m2を使用する例が見られる。鉄鋼JISの影響がある。一方、機械、自動車分野では、多くの場合に、Paを使用するようにし、力学計算の場合な、N/m2を使用する例が多く見られる。

5.仕事について

5.1仕事の単位[kg・m、kgf・m→J(ジュール)、W・s(ワット秒)]

 仕事の定義は、力の大きさ1Nが、その力の方向に物体を1m動かすときにする仕事をいい、単位はジュールで表す。すなわち、 仕事=力×動いた距離 仕事というのは、時間の概念が入っていないので、どれだけの力でどれだけの距離を移動させたかで決まる。時間の概念が入ると、仕事率になる。
 仕事のディメンジョンは、次のようになる。

  力×動いた距離 =[kg×m]=J

 すなわち、SIでは仕事はN・mをジュール“J”という固有の名詞で与えられ、定義は1Nの力で1mの間を物体を移動させるときの仕事が1Jである。
 従来単位とSI単位との関係は 

 1 kgf・m=9.80665 N*m≒9.8J

となる。
 W・sやW・hは、電力量の単位として使用され、通常、kW・hで表す。このkW・hは電気エネルギーであるが、ほかに熱エネルギー、化学エネルギー、光エネルギー、力学エネルギー、弾性エネルギーなどがある。これらの単位は、ジュール(J)で表す。
 

5.2 S|化で注意すべき事項

 仕事は、本質的に熱と同じエネルギの一つである。この量に対する単位は、“力×動いた距離”を“J”で表すので、思考過程においてはN・mで表し、1 N・m=1Jとしたほうが現実的かもしれない。
 一般的には、仕事を直接に計量することはない。

6.仕事率、工率について

6.1 仕事率、工率の単位[kg・m/s、kgf・m/s→W(ワット)、J/s(ジュール毎秒)]

 仕事率、工率は、単位時間に行った仕事であるから、その単位はkgf・m/sをJ/sやwに変更しなければならない。電気の分野では、すでに仕事率はSI単位のワット(W)を使用していることから、その他の分野で使用する仕事率の単位はWやJ/sに変更することになる。 

 1W=1 J/s(毎秒1Jの仕事率、工率)

 仕事率や工率の従来単位には、仏馬力(PS)がある。  1 PS=75 kgf・m/s=75×9.806 65 =735.5W また、英馬力(HP)がある。これは、毎秒550 ft・1b (フートポンド)の割合でなされる仕事であり、換算すると745.7Wとなる。咋今では、あまり使用されていないようである。
 なお、1 HP=L 014 PS の関係がある。 仕事率、工率の換算関係を表3.3に示す。

6.2 S|化で注意すべき事項

 新計量法附則第6条に、仏馬力(PS)は内燃機関に関する取引又は証明等について、当
分の間、工率の法定計量単位とみなす、ことが規定されている。しかしながら、一般的には力やトルクをSI化した場合には、工率の単位だけを従来単位で表示することは、繁雑さを導くものであるといえる。。

7.熱量について

7.1熱量の単位[ca1→J(ジュール)]

 従来、熱量の単位ぱca1”を用いてきたが、SIでぱJ”に変更する必要がある。従来では仕事をカロリーで表すために、N・mで計算して求めた値を換算係数4.2で除していたがジュール(J)で表す場合は、4.2で除さない。
 従来単位(ca1)と、SI単位(J)の関係は 1 ca1=4.18605 Jである。
 熱力学の第1法則では、熱は本質上仕事と同じエネルギーであって、仕事を熟に変えることも又その逆も可能である、と述べている。単位も仕事と同じジュール(J)である。熱量(Q)と力学的エネルギー(Gh)とは、熱の仕事当量(A)によって関係付けられる(図3.7)。すなわち、

  Q=AGh(t1一t0) (J)


 製品の性能の発熱量を示すカタログ物性値や性能を表すのに、熱量の単位を使用することがままある。このカタログの記載値は、猶予期間後はSI単位のジュール(J)を使用することになる。
 

7.2 Sl化で注意すべき事項

 熱量の“ca1”を“J”に変更することで、熱量による組立量である熱容量(J/℃又はJ/K)、質量エントロピー[J/(kg・K)]、質量熱力学エネルギー(J/kg)なども変更しなければならない。これらの単位は法定計量単位として規定されているわけではないが、熱量に“J”することにより、変更することが合理的だと言える。
 熱伝導率や熱伝達係数の単位も“ca1”に関係するが、8.に示すように、“W”を含む単位記号を使用することになる。

8.熱伝導率について

8.1 熱伝導率の単位[cal/(s・m・℃)→W/(m・℃)(ワット毎メートル毎度)、W/(m・K)(ワット毎メートル毎ケルビン)]

 熱伝導率は、物体内部の等温面の単位面積を通って単位時間に垂直に流れる熱量と、この方向における温度こう配(温度差/距離)との比であり、一般に熱の伝わりやすさを表す量である。熱伝導率の定義は、その煤質の長さが1mにつき1度の温度こう配があるときその温度こう配の方向に垂直な1 m2の断面を通過して、1秒につき1Jの熱量が伝導されることをいう。

 熱伝導率の単位は、kca1/(s・m・℃)が使用されてきたが、SIでは、W/(m・℃)又はW/(m・K)を使用する。

 熱伝導率の単位は、機械、電気、自動車、化学装置の熱交換器などの伝熱計算でよく用いられる。例えば、熱交換器メーカー又はプラントメーカーとその機器を発注した企業との間での取り交わされる図面、設計計算書などの中で用いられる。現在では、まだ従来単位のcalが使われている場合が多いように見受けられるが、取引、証明行為などには必ずSI単位の使用が必要となる。
 伝熱計算のソフトは、SI単位と非SI単位のどちらでも選択できる内容になっている場合が多く、単位への慣れが浸透するのも時間の問題であると思われる。

8. 2 SI化で注意すべき事項

 熱伝導率の単位は、“cal”を含んでいるので、これをSI単位に変更する。“cal”と”W”の関係は、J/s=Wの関係から、J=W・sを使用すると、

 1 ca1/(s・m・℃)=4.18605 W/(m・℃)

が得られる。
 また、温度については、℃又はKを使用する。一般的には、温度に℃を使用するので、
敢えてKを使用する必要はない。

9.比熱容量について

9.1 比熱容量の単位[ca|/(kg・℃)→J/(kg・℃)(ジュール毎キログラム毎度)、J/(kg・K)(ジュール毎キログラム毎ケルビン)]

 比熱容量は、物質1 kgの温度を1度だけ上げるのに必要な熱量を示すものである。その単位は、熱量のca1を含んだ組立単位kca1/(kg・℃)が使用されてきたが、SIではJ/(kg・℃)又はJ/(kg・K)を使用する。
 比熱容量は化学工業の分野で比較的多く使用されているが、取引又は証明に関して、猶予期限後に比熱容量の単位を使用する場合は、SI単位を使用する必要がある。

9.2 SI化で注意すべき事項

 比熱容量の単位は、“cal”を含んでいるのでこれを“J”に変更する。
 

参考文献

1)日本自動車整備振興会連合会教科書編集委員会:自動車整備のSI化、(社)日本自動車整 備振興会連合会
2)渡辺武夫:JIS鉄鋼規格のSI単位移行計画、標準化ジャーナル1986、2、p.116、(財) 日本規格協会